生前整理を始める前に読みたい基礎知識
投稿日:2024年5月8日 | 最終更新日:2024年5月8日
生前整理は、近年では多くのメディアに取り上げられ、その重要性を知ることができるようになりました。生前整理は「老前整理」とも呼ばれ、今では様々な場所でセミナーが行われています。
ここでは、これから生前整理をはじめてみようと考えている方を対象に、生前整理とはどのようなものなのか。また、生前整理はどのようなことを行うものなのかを解説していきます。
Table of Contents
生前整理とは
生前整理とは、まだ生きているうちに自分の所有物や財産を整理し、自分の死後、遺族が困らないようにすることです。したがって、生前整理は「自分」で行う必要があります。
ただ、このようなことをいうと「死に支度」と勘違いする方が多いですが、そうではありません。生前整理とは「これから人生をよりよくするための身辺整理」です。
これまで手放せなかったものを処分することで「執着」も一緒に手放します。必要と思っていたものでも手放してみると必要でないことに気づいたり、部屋がスッキリして気持ちも軽くなります。
生前整理は家族のためだけではなく、自分のためにもなることなのです。詳細については後述しますのでぜひご覧ください。
生前整理では何を行うべきか
生前整理と一言でいっても、その内容は多岐に渡ります。生前整理で考えられるものとして、次のようなことが挙げられます。
・財産、所有物の整理
・医療、介護の希望を伝える
・葬儀、お墓の希望を伝える
・相続、遺言の希望を伝える
・意思、思いを家族へ残す
このようなことを行うことを生前整理といいます。それでは一つずつ具体的に見ていきます。
財産、所有物の整理
生前整理と聞いて一番に思い浮かべやすいのが、この所有物の整理ではないでしょうか。最も取り組みやすく、すぐに始めることができます。
所有物の整理は重要です。不要なものを処分することで、身軽になることができます。また、自分の死後、家族に遺品整理の苦労をかけずにすみます。
そして財産の整理とは、あなたが所有するお金や、お金に代わるものを整理することです。また自分の死後、「相続はどのようにするのか」、「葬儀お墓の費用はどうするのか」、「所有する家や持ち物はどうするのか」なども考えなければなりません。財産には次のようなものが考えられます。
お金に関する財産
現金、預貯金、有価証券、権利書、保険、不動産、インターネット上の財産(ネット口座など)、クレジットカードなどが考えられます。
モノに関する財産
家屋、土地、家具、貴金属、車、レコード、骨董品、芸術品などが考えられます。
このような直接お金に関わるものは、自分の死後トラブルになる可能性が高いので、十分に整理しておく必要があります。また、借金も財産の一部になるので注意が必要です。
医療、介護の希望を伝える
終末期医療(延命治療・尊厳死など)や臓器提供など、自分の意思で決めることが出来ない状態になったときの希望を伝えておくことは大切なことです。
また、認知症や寝たきりになった場合など、いざ介護が必要になったときどうして欲しいのか(家族に介護してもらうのか、介護施設を利用するのかなど)を事前に話し合うことも大切です。
葬儀、お墓の希望を伝える
葬儀といえば、ほとんどの方は葬儀場でお坊さんがお経を上げしめやかに行われるものだと考えます。しかし、最近ではこれまでのしきたりにこだわらず、「自分らしさ」を重視する方が多くなってきています。
例えば、「伝統的な葬儀にしてほしい」、「笑顔で送って欲しいから楽しい葬式にしたい」、「家族だけで簡素に行ってほしい」、「そもそも葬式はしなくてよい」など選択肢は様々です。
また、現在ではそのような希望を事前に伝えることができ、生前予約を受けてくれる葬儀社も増えています。このようなサービスがあることを事前に知ることで、自分らしい葬儀を行うことができます。
葬儀同様、お墓のことも決めておかなければなりません。「寺院墓地」、「公営墓地」、「民営墓地」はどこを選択するのか。また、お墓の予算をどのくらいにするのかなど事前に確認しておきます。気になるお墓を見つけることができたのであれば、実際に見学をしてみることも大切です。
相続、遺言の希望を伝える
遺言書で自分の意思を残すことは、自分の死後、家族間のトラブルを避けるために有効な手段です。遺言書がない場合、本人の意思が伝わらないため法律に従い分配されます。
「自分の財産を自分の意思で分配したい」と考える方や、「自分の財産を寄付したい」などの希望がある場合は、遺言書は不可欠になります。
相続やお金に関することは、特に問題になりやすいデリケートな部分です。残された家族が困らないよう本気で考える必要があります。
意思、思いを家族へ残す
生前整理で一躍有名になったのがエンディングノートです。遺言書のように法的な縛りがないため、気軽に取り掛かることができ、自分の意思や思いを簡単に残すことができます。
生前整理に関する項目が網羅されているので、なにから始めるとよいか迷ったときに利用すると、生前整理をスムーズに進めることができます。
今では様々なエンディングノートが販売されています。一度手にとって確認してみることをお勧めします。
生前整理のメリット
続いて生前整理をするメリットを考えてみましょう。主に以下のようなメリットが考えられます。
・自分の意思で残さないものを選ぶことができる
・残された家族の負担が激減する
・心が軽くなる
・生活がシンプルになり今後の人生が楽になる
・頭と身体を使うので認知症防止になる
・好きなものに囲まれて生活できる
・後悔がなくなる
・早期に不安が解消し気持ちの整理ができる
個人的な意見を述べさせていただくと絶対に行ったほういいです。その理由を一つずつ確認していきましょう。
自分の意思で「残さないもの」を選ぶことができる
生前整理を行う方は、家財や現金など財産となるものを子供達に残したいと思われ方がほとんどです。ここで重要なことが、残したくないものを自分で整理できるということです。
中でもプライベートな所有物はあなたが整理する必要があります。遺品整理の現場で特に遺族の方が困るものが、「日記」「手紙」「手帳」です。これらのものは、故人のプライベートなものとしてとても処分しにくいものです。
遺族の方は寂しさや懐かしさもありほとんどの方が日記や手帳を見ます。これらのものを見たあと、幸せな気持ちになることばかり書かれていれば良いです。しかし、時には悲しい気持ちになることが書かれていることがあるかもしれません。
「私には後ろめたいものは何一つない」という方もいるかもしれませんが、そうでない方もいます。生きていれば秘密の一つや二つはあって当たり前です。生前整理をしておけば、このような見られたくないプライベートなものを自分で整理してくことができます。このようなものを整理することは、一つの愛情だと思います。
残された家族の負担が激減する
生前整理を行わず、「私が死んだら誰かがやってくれるだろ」と考えているなら最悪だと思ってください。実際のところ、生前整理をしなくても本人は全く困りません。
本当に困るのは残された家族の方です。莫大な量の遺品のを整理することはとても大変です。また、故人との思い出が強いばかりに、遺品を頑なに手放すことができない方もたくさん見てきました。
このような家族への負担を軽減させるためには、やはりご自身で生前整理を行わなくてはなりません。ただ、自分自身で完璧に整理する必要ありません。高齢の方であれば、体力的に難しい場合もあるからです。
そこで重要になるのが、自分のできる範囲で生前整理を行うことです。例えば、「処分するもの」「残してほしいもの」の意思を伝えるだけでも良いです。これをエンディングノートを活用し書面で残しておくだけでも遺族の負担は激減します。
また、ご自身で生前整理を行った場合でも、ビニール袋に不要品をまとめておくだけでも十分だと思います。このように、自分でできる範囲で行うことが大切なのです。
心が軽くなる
生前整理をすると心が楽になります。これは、実際に生前整理をやってみると「なるほど」と実感できるはずです。
部屋が片付き生前整理が完了すると、皆さん憑き物が取れたようなほっとした表情になります。生前整理をすることで「心の整理がつく」といわれていますが、これは本当です。
悩みというほどではないが、心の隅に引っかかっていたモヤモヤが解消されるため、気持ちが楽になるからです。
実際に、弊社に生前整理を依頼されたお客様は、「ずっと気になっていたのです」、「なぜもっと早くやらなかったのだろう」と小さな後悔を口にされることは多いです。
生活がシンプルになり今後の人生が楽になる
先述したように、精神的な部分で楽になるという事実がありますが、物質的にもとても楽になります。なぜなら、部屋が片付くため何をするにしてもスムーズに行うことができます。
また、モノに躓いたりすべって転んだりといった危険を排除することができます。このようなことからも生前整理をすることは非常に重要なことだといえます。
弊社のこれまでの経験上、高齢の方は物を溜め込む傾向があります。食器、ビニール袋、様々な種類のビン、衣料品にいたるまで、物に囲まれていることが当たり前と感じている方は少なくありません。
当然、そのような部屋ではあらゆるものが床に置いてあるため、まっすぐ歩くこともできない危険な環境で暮らしている方は多いです。まだ健康で元気があるうちはそれでもいいかもしれません。しかし、誰もが10年後には10歳年を取り、体力的に衰えてしまうことを理解しなければいけません。
未来のことを考え、元気なうちにモノを整理しておくことで、これらの問題を解決することができます。
頭と身体を使うので認知症防止になる
生前整理をすることで、認知症の予防に役立ちます。
認知症を予防するためには、「考えること」「身体を動かすこと」が重要です。必要なものと不要なものを分別するだけでもいい刺激となり、脳を活性化させます。また、不要品を持ち出して袋に詰めるだけでもかなりの運動量になります。
生前整理の中でも、特に写真整理は認知症防止に最適です。新婚旅行で行った海外の写真や子供や孫達のイベントなど、昔の懐かしい写真を見ながら過去の体験を思い出して下さい。
この刺激が脳を活性化させ認知症の予防につながります。これを「回想法」といい、認知症予防に効果的な心理療法として知られています。
このように、片付けには脳を刺激する要素がたくさん詰まっています。生前整理を「面倒くさいもの」と決め付けず、まずはやってみることが大切です。また、楽しみながら行うことが生前整理のコツです。
好きなものに囲まれて生活できる
高齢の方であるほど自宅で過ごす時間は長いです。その長い時間を共にするモノたちが、嫌いなものであったり、我慢しなくてはならないものであったりすると人生が楽しくありません。
どうせなら、自分が好きなものだけに囲まれて暮らしてみてはいかがでしょうか? 不要なものや嫌いなものを手放すことで、部屋がきれいになるばかりか心の健康にも良いです。
実際の現場では、さまざまな理由から整理ができていない家庭があります。それは、これまで必要性を感じてなかったり、体力の衰えであったりと、その理由は人それぞれ違います。
そのような方たちの多くは、「元気なうちに整理しておけばよかった」と後悔している人が多いです。また、「本当はいらないのだけど、処分することが難しい」と感じている方もいらっしゃいます。
このような後悔をしないためにも、早めに身辺整理をすることで、好きなものや必要なものだけに囲まれて生活できるようになる必要があります。
後悔がなくなる
生前整理は所有物に対する整理を想像してしまいがちです。もちろん所有物を整理することも大切ですが、それ以上に「心の整理」につながります。
例えば、あなたはやり残したことはないでしょうか? 人生をあらためて振り返ってみると、忙しい日々に埋もれていた願望や欲求が思い起こされます。例えば、次のような思いはないでしょうか。
- 憧れていた海外旅行にいきたい
- これまで我慢していた趣味がある
- どうしても会いたい人がいる
- 謝りたい人がいる
- けじめをつけたい人がいる
このように思うことはないでしょうか。人間が持つ願望は、やる気があればいつでも叶うものばかりです。生前整理と聞くとネガティブな印象を受けがちですが、これからの人生を楽しむために行うという側面もあります。
子供達も巣立ち、自分の時間を十分とることができるときに、これまでできなかったことを思いっきり楽しむために「心の生前整理」をしてみてください。
早期に不安が解消し気持ちの整理ができる
ある程度の年齢になってくると、考えたくはないですが自分の死を漠然と意識し始めます。例えば、次のようなことです。
「今死んだらどうなるのだろう」
「家や家財はどうなるの?」
「子供達に任せてよいものか」
最近では各種メディアがこぞって生前整理に関する特集を組んでいるので、半ば強制的に意識させられている方もいると思います。
しかし、生前整理に早めに取り組むことで、これらの不安を解消することができます。また、所有物や財産を整理することで、家族にも安心してもらうこともできます。
生前整理を行なわない場合のデメリット
逆に生前整理をやらないという選択肢もありますが、その場合どのような問題が考えられるでしょうか。
まず、本人についてですが、デメリットは特にありません。これまでと同じ暮らしをしながら、流れに身を任せることになります。
逆に、生前整理にとられる時間や労力を自分のために使えるため、「自分のことだけ」を考えるのであれば終活をするメリットはないかもしれません。
しかし、当然これらのしわ寄せは家族に降りかかります。残された遺品の整理や相続問題など、全て残された家族が行うしかありません。
人はいつ死ぬかわからないものです。だからこそ、いつ死んだとしても家族にできるだけ負担がかからないよう準備をしておくことが大切になってくるのではないでしょうか。
まとめ
ここまで、生前整理の基本と必要性について述べてきました。
生前整理は普段から意識しづらいものです。しかし、ご自身が死んだあと、家族の負担を少しでも和らげることができるのが生前整理です。
また、家族だけのためではなく、自分のために生前整理をすることも大切なことです。これから生前整理をはじめてみようとお考えの方は、ぜひ真剣に取り組んでみてください。
前の記事へ
« 遺品整理で忘れがちなデジタル遺品とは次の記事へ
遺品整理業者の選び方 »